大分建設新聞

四方山

公共心

2024年02月01日
 「岩薬師」と呼ばれ、大分市元町の人たちの手で大切に守られてきた「大分元町石仏」。石に彫られた磨崖仏が多数残る県内でも、臼杵石仏と並ぶ大分を代表するものとして知られる。平安後期の作とされ、今から90年前に国の史跡として指定されたことでも、その文化財的価値は折り紙付きである▼昨年、久しぶりに訪ねると、高さ3メートルほどの石仏の肩から足にかけて、ハガキ大の白い和紙がペタペタ貼られていた。まるで関節痛を緩和させる湿布のよう。聞けば、腐食の進行を防ぐための措置だった。腐食の原因物質は石仏に染みこんだ塩類。和紙を使って吸い取ろうという寸法である。市教委が編み出した技法で、国内外の文化財担当者から注目されているという▼大分の玄関口、JR大分駅前のフランシスコ・ザビエル像。両手を広げる姿は、訪れた人を優しく出迎えているようで、まさに駅前のシンボルである。そのザビエル像の胸の辺りに、プリントシールが貼られたのは昨年11月末のこと。しかも簡単に剝がれないように、特殊な接着剤が使われていた。漂うのは、腐食を止めたいという願いがこもった石仏の和紙とは真逆の底知れない悪意である▼年明け早々には、市内4カ所の公園に設置されたトイレが何者かによって壊された。それだけではない。市中心部のビルの壁に描かれたパブリックアートには、派手ないたずら書きがされた。ザビエル像については複数の未成年者が名乗り出たというが、一体どういう意図だったのか▼相次ぐ公共物への破壊行為に、足立信也市長は会見で「市民が払ってくれた税金を中心にやっているのでやめてもらいたい」と語った。「税金」も大事な論点であろう。だが「安全・安心」に直結する公共心の喪失が社会をむしばむことに、もっと怒って良かった。(熊)
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