大分建設新聞

インタビュー

河上 徹治さん(㈱日栄社長)

2024年06月04日
 建設業界では、建築物や工作物の解体、改造・補修工事を行う際、有資格者によるアスベスト(石綿)の事前調査の実施が義務付けられたことへの対応が急務になっている。石綿調査・除去・解体工事を始め、熱絶縁・保温保冷工事、交通安全施設・電気工事、一般土木工事を手掛ける、㈱日栄(大分市乙津町)の河上徹治社長に、石綿事前調査の取り組みについて話を聞いた。
 2021年4月から、原則的に全ての建築物の解体、改造・補修工事で石綿事前調査を実施することが義務付けられた。22年4月からは、解体工事では当該作業の対象となる床面積の合計が80平方㍍以上、改造・補修工事では当該作業の請負代金の合計額が100万円以上のものについて、調査結果を自治体と労働基準監督署に報告する必要があるとされた。さらに、23年10月から建築物の解体、改造・補修工事を行う際は、有資格者による石綿事前調査の実施が義務付けられた。これら一連の施策は、大気汚染防止法と労働安全衛生法(石綿障害予防規則)の改正によるものだ。
 まさに今、従来から調査を実施してきた専門調査業者や建物解体工事業者のみならず、電気工事業者や設備工事業者なども続々と調査に係る資格を取得している。以前は、石綿事前調査の資格を取得するのはほとんどが解体工事業者だったが、今ではゼネコンやサブコン、設備工事業者、建築士などまで、本当に多くの関係者が講習会に参加して資格を取得しようとしている。「ただ、自ら判断が難しい調査については専門調査業者に依頼が来る。昨年から、私どもへの調査依頼も倍増の状況だ。建設工事をストップする訳にもいかず、困っている方は多い」と河上社長は話す。
 石綿事前調査の実施に当たっては、書面調査と目視調査(現地確認)が必要になる。まず、書面調査では建設当初の図面などで石綿の有無を調べる必要があるが、長い年月の間に原図の所在がわからなくなっているというケースも非常に多く、時間を有する場合もあるようだ。
 日栄では、急増する調査の依頼に対応するため、社内業務の効率化・DX化を図り、正確で公正な報告書を作成するために「日栄石綿事前調査システム」というソフトを開発し、自社での運用を開始した。このソフトによると、図面がない建築物の事前調査で必要な図面の作成においてJWCADやDXF、B―MOSなどのデータのほか、スキャンした図面やJPG図面を容易に取り込むことができ、書類を作成できる。自身で簡単な機能を使って調査対象物件の図面を作成することも可能だ。
 さらに、このソフトではタブレットPCで現場写真を撮影し、すぐに調書に取り込むことができる。行政向けの石綿事前調査報告書とWEB申請を一気に行うことができ、3年間の保管が義務付けられている報告書を、台帳管理により確実に保存することもできる。石綿含有の判断とした報告書に添付が必要な「石綿がないことの根拠データ」も保存ができるという。
 「開発したソフトを使うことで、迅速な調査を行えるようになった。現場で困っている多くの方を支援したい」と力を込める。
 問い合わせは、同社(℡097〈521〉6171)、またはメール([email protected])まで。
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