大分建設新聞

インタビュー

小野 朋次さん(山国川河川事務所長)

2024年07月12日
1995年4月に国土交通省入省。武雄河川事務所技術副所長などを経て、2022年4月環境省大臣官房環境影響評価課環境影響審査室審査官として出向。4月から現職。
 名勝「耶馬溪」を誇り、耶馬日田英彦山国定公園内の大部分を流れている山国川。その見事な景観を生み出す山国川を管理しているのが山国川河川事務所だ。2度目の勤務となる小野朋次所長にとって、思い出の地でもある。
 2012年にダム管理課専門官として着任し、耶馬溪ダムの管理を担当していた。同年7月の九州北部豪雨によって山国川で大きな災害が発生し、床上床下浸水194軒の対応に追われた。
 「当時、ダムがあるため水害が発生したなどと言われたんです」。ダムの操作について住民から反発があり、それを払拭するため住民に理解してもらうにはどうしたら良いのか悩んだという。治水事業や防災対策の重要性、説明責任について改めて実感した。
 この災害を受けて、翌13年から18年まで床上浸水対策特別緊急事業が実施された。これにより昨年も12年と同規模の出水があったが、床上床下浸水が27軒まで減少、同事業の効果が表れた形だ。
 「今回着任して驚いた。12年当時から比べると安全度がかなり上がっており、諸先輩が苦労したのが分かる」と話す。
 さらに住民へ説明の重要性を再認識したのは、2020年佐賀県の武雄河川事務所に技術副所長として赴任した時のことである。着任早々、同事務所管内の六角川で水害が発生して約2900世帯が水に浸かった。その対策として洪水調整池を新たに設ける事業が決まった。
 調整池整備の予定地区は、約100軒の集落で約300人の住民がいた。このため多くの住民を集めて説明会を開かなければならなかったが、コロナ禍の真っ只中で大人数での開催は不可能。耶馬溪ダム管理担当当時の説明責任の思いが蘇った。
 そこで小さな会場を借りて始めたのがオープンハウス方式の説明会。住民に呼び掛けて会場にきてもらい、時間帯は2組までに制限し最小限のスタッフで対応した。さらに同事務所内で水害に関する動画も制作し、小野所長自身が音声を担当するほど力を入れた。「学ぶことが多かった。これからも説明に努力しなくてはいけない」と思いを新たにしている。
 今年度は、災害対策以外に山国川の改修や施設の維持管理、地域の観光振興やまちのにぎわいを創出させるため、自治体と連携した「山国川かわまちづくり」に取り組んでいる。中津市相原地区の堤防整備や流下能力を確保するため、百留地区、原井地区、三光土田地区の河道掘削工事を行っているほか、防災ステーション事業(福岡県側)の基盤整備、三つの水辺拠点整備なども実施中だ。
 建設業界へは「山国川はこれまで大きな災害が度々発生しており、災害協定を締結している建設会社や地域の建設業界の迅速な復旧活動に感謝している。河川整備や適切な維持管理を実現するには欠かせない存在で、意見交換しながらより良いパートナーとして継続したい」と期待した。所員は総勢33人とあって、全員がプロ意識を持って業務に当たっている。
 4人家族。趣味はオートバイだが、一時休止中で近く復活する予定。佐賀大学理工学部卒業。佐賀県出身の53歳。
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