またトラ
2024年11月12日
「もしもトランプ氏が米大統領選に返り咲いたら」という意味で使われた「もしトラ」。今年の初めまでは、まさかと思われていたが、ふたを開けてみればトランプ氏の圧勝である。接戦州と呼ばれた全ての州で、民主党のハリス氏を抑えた。米国民の声の後押しで「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)の「またトラ」時代がやってくる▼日本にとっては苦難の時代の到来である。輸入品に対して10~20%の追加関税の導入を明言しており、自動車など日本の輸出産業にとっては、大打撃となるだろう。安全保障に関しては、同盟国への負担増を求めており、在日米軍への「思いやり予算」の増額はもちろん、兵器―それも型落ち―の爆買いを求めてくることも想定される▼外交はディール、つまり損得計算に根ざした商取引と言ってのけるトランプ氏と、日本の石破茂首相は渡り合わなくてはならない。石破首相の話で特徴的なのは「~ねばならない」という語尾を多用することだという。毎日新聞11月5日付紙面によると、衆院選開票翌日の自民党総裁としての会見では、「誠実に耳を傾けねばならない」など7回に達した▼回りくどい、どこか理想主義的な石破語法が、損か得かを前面に押し出すトランプ氏に通じるかどうか…。トランプ氏が当選を決め、石破首相は7日、初の電話会談に臨んだ。感想を求められた石破氏は「話をしたのは初めてだが、フレンドリーな感じがした」と語った。外交上の儀礼があるにしてもどこか甘い▼というのは、電話での会話時間はわずか5分だった。あまりにそっけない。フランスのマクロン大統領とは25分である。韓国の尹錫悦大統領の12分に比べても半分以下であり、やや見劣りがする。「ジャパン・ファースト」の気概で少しは食い下がってほしかった。(熊)