大分建設新聞

四方山

得意冷然

2024年11月21日
 戦国時代、安国寺恵瓊(あんこくじえけい)という怪僧がいた。中国地方の大名、毛利家の外交官として活躍、同時代の織田信長とも面会している。天下統一を目前にしての得意絶頂のころである。その時の印象を毛利方に書き送っている。「信長の代、五年三年は持たるべく候。(中略)高ころびにあおのけにころばれ候ずると見え申し候」▼数年は信長の時代は続くだろうが、いずれ転がり落ちると見抜いた。後の本能寺の変を予見した文書として知られる。恵瓊は後に豊臣秀吉によって大名に取り立てられたが、関ヶ原の戦いで徳川家康に敗れ首を落とされた。「得意絶頂の時にこそ、隙ができることを知れ」とは、家康の言葉とされる。浮かれた時にこそ、目の前に落とし穴が控えているという戒めであろう▼与党過半数割れのなかで、キャスティングボートを握った国民民主党。所得税課税となる「103万円の壁」の撤廃などを掲げ、国会運営の主役の座に躍り出るなど、〝超モテ期〟を迎えたはずの玉木雄一郎代表が醜聞に見舞われた。不倫騒動である。政界きってのイケメンで知られる。プライベートでも相当もてたのだろう▼かつて自身のブログで「『絶対に、不正をしない。』『絶対に、不倫をしない。』」などと書いていたことも、ブーメランとなってわが身に襲いかかる。党倫理委員会が事実関係を調査する騒動に発展。玉木氏にとっては「不倫報道の壁」が立ちはだかる格好だ▼「得意泰然」という戒めの言葉があるように、人間とはかくも有頂天の時につまずきやすいものらしい。「泰然」では甘いとばかりに、「得意冷然」と言ったのは、ゲーム会社の任天堂を世界的企業に押し上げた経営者の山内溥(ひろし)氏だ。うまくいっても何ごともなかったように「さらに努力せよ」という意味で使った。何とも味わい深い。(熊)
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