大衆食堂
2024年11月29日
「大分には立ち食いそば屋がない」と、以前、当欄でボヤいたが、最近、大衆食堂が少なくないことに気付いた▼ある取材のついでに、目に付いた大衆食堂でお昼にすることにした。入り口のガラス戸を入るとテレビは点いているが、誰もいない。「営業してないのかな」と不安に思いながらも「ごめんください」と、奧に向かって声を掛けると、お店の人が出て来た。「やってますか」と聞くとやってるらしいので、テーブルに陣取った▼昼なのに薄暗い店内を見回すと、いかにもな雰囲気。化粧板のテーブルにビニールクロス。壁には新聞の切り抜きや、お祭りのポスターと観光地図。メニュー表には定食のほかに、丼ものやカレーライス、チャンポン、うどん…何でもあってうれしくなる▼大衆食堂らしいメニューといえば人それぞれだろうが、いたって家庭的なものばかり。例えば、サバの味噌煮、ホウレンソウのおひたし、もちろん味噌汁も。作り置きの惣菜を並べておき、好きなものを取るスタイルもある。ビールや酒を置いているお店では居酒屋使いする人も。こういう食堂は、お通しが無料であることも多いのでありがたい▼大衆食堂の最大の特徴は、看板やのれんに「大衆食堂」とデカデカうたっていること。その名の通り、味・量ともに良し、学生や庶民、特に肉体労働者の味方である。ネクタイ姿のビジネスマンなどはめったに見かけない。こういうお店が仕事場の近くにあると、毎日何を食べるか選ぶ楽しみもある。ただし、お店の人にサービスや愛想を求めてはいけない。それも味のうちだ▼近年、町中華が脚光を浴びているようだが、大衆食堂を忘れないでほしい。食欲を満たせてスタミナもつく。取材に出掛けた際、お気に入りの大衆食堂を見つけるのが楽しみになりそうだ。(コデ)