佐藤 光雄 さん(さとうベネック取締役)
2007年11月20日
さとうベネックが開発した土留め工の特許技術「SCB工法]。十七年度の科学技術分野における文部科学大臣表彰を受けた。佐藤さんは、同工法の発案者。
SCB工法とは、どんな工法か。「鋼矢板を使った控え壁式土留め工法のことで、切梁や中間杭のない自立式土留め壁の掘削深度を6mまで可能にしたのが最大の特徴。従来の工法では3mが限界なので倍以上の深度で施工でき、安全性向上と工期の短縮に成功しました」。
特許技術はご自身の考案?。「技術考案は私ですが、実用化には多くの人の協力が必要でした。特に、特許申請中に土留め専門工事業者のヒロセ(東京都)から技術提携の打診があったのがうれしかった。専門家に認められたわけですから。その後、同期の矢吹政秀君や竹内一博君が恩師の落合九大教授に協力依頼するなど、影の功労者となってくれた。人の輪が絡み合って、出会いと出会いがつながって完成した技術といえます」。まさに「人の輪」の産物だった。
実用実験にこぎつけるまでは大変だったようだ。「模型での実験では成功していたが、実物と同じ状況にするには模型の50倍の重力場が必要でした。実験装置を持つ厚生労働省の産業安全研究所の協力を得られたのも、人と人のつながりが産官学の連携を実現させてくれたといえます。そのせいかどうかは分からないけど、ヒロセから話があったのが妻の誕生日だったり、特許登録が結婚記念日だったりと、支えてくれた人と関係ある日ばかりなんですよ(笑)」と、ここでも人の輪が支えに。
業界の注目を集めているこの工法。何かと忙しくなりそう。「当面は特許料収入で営業したいと思ってますが、韓国の企業からも打診があったし、新たな市場開拓も視野に入れて技術改良を続けたい。ただ、安全性向上、人命尊重は、お金以前の問題と思って取り組んでいます」。