衛藤ともみさん(大分河川国道事務所)、母親の目線で道路整備
2009年02月27日
実はこのコーナー、国道210号の親子ふれあい通学路点検(1月17日号に掲載)取材の折、衞藤さんにお会いした瞬間に誕生した企画。名刺に「国土交通技官」とあったので、女性技術者は珍しいのでは、とお尋ねすると、「事務所でも民間企業でも意外に多いですよ」とのこと。そこで女性土木技術者の目からみた地域の整備のあり方やこれからの土木の仕事について取材することにしたのだ。いわばこの企画の〝生みの母〟である。 そして2歳の男の子の母である。大分高専卒業後、九州地方整備局採用となり、これまで12年間で、熊本、久留米、佐伯、そしてこの大分河川国道と、九州各地を転勤した。育児は大丈夫?「国交省は、産前産後休暇、育児休業、育児短時間勤務などと、産前産後を通じて、さらに子育ての期間もカバーする制度が充実しているので安心です」。民間企業ではなかなかこうはいかないだろう。 衞藤さんが土木の世界に入ったきっかけは、前回の藤本美由紀さんと同じく「川」。「子どもの頃、家の近く、平和市民公園のそばを流れる裏川が汚なかった。親の時代は浅瀬に入って遊んでいたようで、川に入って遊べるように、人と子供が川に親しめるようになればよいのに、と高専で土木工学を学んだ。川は、土木の世界へ女性技術者を呼んでいる。 国道10号・210号の交通安全事業を担当する。計画、設計から積算・発注までの一連をこなすが、前述の親子ふれあい通学路点検は、まさに母としての衞藤さんにぴったりの仕事だ。「ベビーカーを押すと、道のガタガタに気付きます。母親としての視点を生かせるなら、それがうれしい。道はいつまでも残るもの。丁寧に造れば、子供や孫の代までいつまでも使ってもらえるから」と言う。また、環境や景観について、色彩など「これはどう思う?」と男性職員から聞かれることもある。女性ならではの感覚が求められるのだろう。 上司の野尻浩人道路二課長は「女性だから、といって特別視しない。しかし一般的には土木は女性からは敬遠されるだろう。この点、彼女は後輩たちの目標になるような人。穏やかな人柄だが芯はしっかりしていて、仕事は非常に前向きで期待に応えてくれる。早く要職に就かせて責任ある仕事を任せたい」と衞藤さんの仕事ぶりをたいへん評価している。 32歳。ご主人も九州地整採用で、現在は別府空港・港湾整備事務所に勤務する。ひょっとしたら転勤で離ればなれになるかもしれない。が、衞藤さんは仕事と家庭の両立に動じる様子はなく、ほがらかにしっかり、いい仕事をしているようだ。