大分建設新聞

インタビュー

河野 正春さん(ふるさとの自然を育てる会会長)

2010年08月31日
 豊後高田・田染の里にシンガーソングライターの今成佳奈さんの澄んだ歌声が響いた。〝子どもの森自然公園〟の水上ステージ。「子どもの森」の森づくりに集まった200人は、田染が生んだ歌姫、今成さんの歌声に聴き入った。  田染相原の森づくりを手がける「ふるさとの自然を育てる会」会長の河野正春さん((株)三州コンクリート専務)は、ふるさとの山々が荒れ、里山らしい風景が失われていたことに衝撃を受け、10年前、会を結成した。目的はひとつ、〝里山の再生〟である。  「やりっぱなしの活動はしない」ことにこだわる。〝森づくり〟と称して人を集め、植林するだけで満足していないか。里山とは、その後の維持管理があってこそではないか。  継続的な里山の管理には、地域住民の協力と仕組みづくりが必要と、土地所有者との対話を大切にしてきた。計画当初、地域が一体となって里山づくりをするようになるまで、5年はかかると見ていた。会の本格的な始動からおよそ5年。今では交代で里山維持の作業に励むなど、住民が積極的に里山への関わりを持っている。  『地域住民と一緒に』という河野さんの思いは、農業用ため池に設けられた水上ステージが象徴している。「ステージをため池の上に造ったら、農業用水の貯水量が減る。『その分、これだけ掘れば貯水量は維持できる』という話し合いをしながら実現した」と、苦労を語る。「こんなもの、貯水池に造らせてくれる地区は、ほかにはないぞ」とも。  河野さんの里山づくりは、地域住民の農作業にも好影響を与えている。作業道の整備で、これまで歩いてシイタケ山に行かなければならなかったのが、軽トラックで行くことができるようになった。住民の山と山をつなぐ道ができ、共同体としての連帯感が以前より強まったという。  「『里山はいつごろ完成しますか』と聞かれるけど、〝ここまで整備したから終わり〟というのはないよ」と、里山づくりの難しさを語る。イノシシやシカとも共生できるよう、里山の生態系の維持にも心を配る。「この里山がいつまでも地域の活力の源であるように」と、河野さんは願っている。




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