熊田 孝さん(クマタ工芸社長)
2012年09月13日
看板によって、店や会社のイメージが変わったという経験を持つ人は多いはず。誰が作っても同じ看板より、書く人によって違うイメージになる〝味のある看板”にこだわり続けてきた、クマタ工芸(大分市三川下)の熊田孝社長。自らを〝看板職人”と呼ぶ。「字を書ける職人が少なくなってきた」と残念がる。
27歳の時に知り合いの勧めで起業。中学で教わった美術の早川和先生の油絵に影響を受け、授業とは別に手ほどきを受けていたというから、早くからその才能をのぞかせていたのだろう。定時制高校に進学した熊田さんは、昼間は早川先生の親戚が経営する広告会社で働き、そこで看板書きの基礎を学んだ。
昔は筆とペンキとモノサシで書いていた看板も、今ではパソコンやインクジェットプリンターなどの高性能機械で作る時代に変わってきた。「自分は仕事を選んだりしないが、景気が悪くなってコストをかけずに簡単に仕上がる味気のない仕事が主流になってきた。完成予想図の注文もめっきり減った」と。
「もう一度、油絵を描いてみよう」と、創作活動を開始。創元会の石川賢先生から指導を受けるために教室にも通った。四季折々の風景が好きで、今年4月にその中の油絵1点を第71回創元展(国立新美術館)に出品し、みごと入選した。
平成4年に道路緑化保全協会主催の写真コンクールで建設大臣賞を受賞したこともあるというから、カメラの腕も相当なもののようだ。「おかげさまで、看板以外にも絵の注文が最近少しずつ増えてきているのはありがたい」と話す。
仕事の合間に描いてきた絵を絵葉書にして、臼杵市にある臼杵湯の里や、国東の梅園の里の土産店で販売。油絵はリースで貸し出すことを計画中とのこと。昨年由布市湯布院町にオープンした「湯布院ハーブガーデン」の仕事では、腕が鳴ったという。61歳。
作品などは、クマタ工芸のホームページで閲覧できる。
〝看板職人”熊田さん
〝看板職人”熊田さん