中村 政秋さん(大分プラスチック工業所社長)
2014年02月28日
再生プラスチックを利用した擬木、つまり「プラ擬木」は読者もおなじみだろう。ところが積算単価の資料に掲載されている製品は大手4社のみ、国内の工場も数えるほどしかない。なんとその中でも国内最高水準の技術を誇る工場が豊後大野市にあるのをご存知だろうか。(有)大分プラスチック工業所(同市三重町)だ。
社長の中村さんは昭和51年、再生プラスチックの原料メーカーを脱サラして創業した。当時は環境問題やリサイクルのためではなく、オイルショック後にプラスチック原料が高騰したために再生素材のニーズが高まったのだという。起業してまず、原料の確保に走り回った。廃プラなら何でも使えるというわけではない。再生素材として活用できるかどうか〝目利き〟が必要なのだ。色を見て触って、焼いてみたり、ときには噛んで原料を吟味する。配合も難しい。
また、安定的に原料を確保できることも重要だ。バージン原料を使うこととは異なる困難が伴う。そうして創業1年後の頃、大手メーカーに確かな技術を見込まれ、プラ擬木の法枠の製造を受注した 。腕と商才があればこそ、1年でブレイクできたのだ。わずか20人ほどの技術者集団ながら、大手の傘下で経営を続けることができ売り上げは順調に推移した。
そして今、中村さんは新たな分野への挑戦を始めている。地球環境問題で再生素材が注目されているが、その半面、排出事業者側のゼロエミッション(廃棄物を減らす)への取り組みで原料となる「いい廃プラ」が減少しているというジレンマもある。しかしまだまだ再生素材の活用法はあるはずだ。中村さんは「世の中にまだないものでも、こんなものができないか、という建設会社や土木コンサルからの相談を歓迎したい。うちは何でもできる」と、同社オリジナル新製品の開発に積極的だ。
例えば「木材ではなくプラ擬木に手書きで文字を刻むことができる企業は我が社だけだろう」と胸を張る。写真のくじゅう連山中岳の標識がその事例で、「中岳の標識が落雷で損傷したことを知り、胸が痛んで作ってみた」という自信作だ。
問い合わせは同社(℡0974〈27〉4005)まで。
自信作の中岳の標識を手にする中村社長
自信作の中岳の標識を手にする中村社長