泉 保則さん(夢想科学)
2014年07月09日
「何でも自分で作る」がモットーの泉保則さん。以前は、半導体関連の仕事をしていた。製造機械のメンテナンスや改良をする仕事で、工場ごとに専用品を使用していることが多いため、豊富な知識と技術、独創性が求められる仕事だ。3年前に一念発起し独立、当時普及し始めていたマルチコプターのラジコンを使った空撮と、機体の製作を請け負う、夢想科学(株)を大分市で設立した。現在、マルチコプターとカメラを使った、コンクリート構造物のクラックを調査するシステムを開発中で、8月には実用化できる見込みという。
マルチコプターは、ヘリコプターのようなローター(回転翼)を複数もつ航空機の一種。ラジコンでは、ジャイロセンサー(角度を検出する機器)とGPSを搭載したものが主流になっており、機体の傾きや位置を自動で制御するため、安定性が非常に高い。カメラにもジャイロを搭載して、傾きを自動修正させることで、驚くほどブレのない映像を撮影することができる。また、泉さんの作る機体は、撮影している映像をモニターで見ながら操縦できる。
泉さんは、小学生の頃からのラジコンカーマニア。その腕前は、自作のマシンで世界クラスの大会で優勝したこともあるほど。ラジコンカーと以前の仕事で鍛えた技術を発揮し、県内外から撮影や制作、修理、改良の依頼がある。電波法で定められている、無線局免許状(携帯局)も取得している。
あるとき、プラント関係の仕事をしている知り合いから、高所にある構造物の撮影を頼まれた。そこから建設コンサルタント会社と知り合い、「コンクリートのクラックを撮影して、その大きさがすぐにわかるようなシステムを作れないか」と相談を受け、システム開発に取りかかった。
パソコン上で映像のクラック部分をポイントするだけで、長さを割り出すシステムのアイデアを提案。試験でもうまくいったため、ソフトの制作にかかった。今月中にはソフトが完成する予定で、機体との調整を終え次第、8月中には実用化する見込み。
泉さんは、「映像をリアルタイムで確認できるので、例えば橋脚の裏側など、機体が見えない場所でも操縦できる。人が行けないところに簡単に行けるのがマルチコプターの強み。インフラや建築物などの維持補修に活用してもらいたい」と話している。
自作のマルチコプターを手にする泉さん
自作のマルチコプターを手にする泉さん