大分建設新聞

インタビュー

日野 伸一さん(大分工業高等専門学校長)

2020年07月03日
 九州大学を卒業後、同大学で教鞭をとっていた関係で、「大分に赴任しても先輩、後輩はもとより教え子までたくさんいるので、皆さんに仲良くしていただいている」と、この2年間を楽しそうに振り返る。
 確かに記者が県庁や民間企業を取材していても、日野さんの評判や敬う声はよく耳にした。
 大学で教鞭を取りながら、ニュートラルな視点で官と民のそれぞれの立場を理解した上で、仕事をする人の姿勢を見てきた経験から「社会で仕事をするには、真摯で豊かな人間性が大切」と確信的に語る。また、「母校で教鞭をとったことで、同窓会活動を担った経験もある」と言い、同窓会活動の大切さにも理解が深く、「学校と同窓会は上手に連携すべき」とも言う。
 大分県では、200人に上る大分高専土木工学科の卒業生(卒業後の大学編入者を含む)が活躍しているが、「その背景には、県の高等教育機関には、大分高専にしか土木工学科がないという環境がある。それだけに県の土木行政を担う大きな責任を負わなければならない立場だ」と、改めて卒業生の活躍に期待を寄せる。
 また、そのためには、「高専の教員が、いま置かれている背景、時代の変遷を踏まえて、研究を通して学生を育てなければならないし、有識者として今以上に積極的に地域社会に貢献しなければならない。高専の教員の奮起を促すのが私の役割」と、校長としての大きな責任を語った。
 専門のインフラの維持管理について話を聞くと、「国(国交省)と地方自治体との連携はおおよそうまく機能しているが、多くの地方自治体は技術職員の数も少ないし、最新の技術に触れる機会も少ない。一方、地場の建設コンサルタントや施工会社なども、プロジェクトや社会実装などに関わる経験が少ない企業が多い」とし、さらに「双方ともに新しい技術の経験を重ねるプロセス、そこから積み上げられるものが大切」と現状を分析しながらも、「地方の活性化という観点から見ると、現状自体が痛し痒しのところもある」と言葉を噛み締める。
 日野さんは、国の提唱で組織された産官学民のボランティア組織『インフラメンテナンス国民会議九州フォーラム』のリーダーを務めている。「昨年『ピッチイベント in おおいた2019』を開催した時には、実行委員会のメンバーとして卒業生に多大のご協力をいただき成功することができた」と感謝の気持ちを込めて語り、「これを大分に根付かせていきたい」と抱負を述べた。
 1975年九州大学工学部土木工学科卒業、80年同大学大学院研究科(土木工学専攻)博士後期課程単位取得後同大学助手に採用、2004年教授に昇進、12年~18年副学長を兼務、18年4月より現職。学会活動、社会貢献活動ともに数多くの要職を歴任中。愛媛県新居浜市出身、68歳。

【メモ】「社会実装」とは、科学技術振興機構(JST)の「社会技術」という概念から生まれた言葉。人間や社会のための科学技術という意味で、得られた研究成果を社会問題解決のために応用、展開すること。


 



 
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