大分建設新聞

インタビュー

大町 知己さん(工務店kitokito代表)

2021年08月19日
 日本文理大学(NBU、大分市)で建築を学び、今年イタリアの世界的デザインコンペ「A'Design Award&Competition」でブロンズ賞を受賞した大町知己さん(工務店kitokito代表、広島県福山市)が2日、母校で受賞記念講演会を行った。久しぶりに大分県を訪れた大町さんに話を聞いた。
 広島生まれ。建築を志したのは高2の時。塾の壁に飾られていた建築写真に強く惹かれた。「その前の夢は小学校の教師。夢を持つ青年だったので、夢の大切さを子どもたちに教えたいと考えていた。しかし建築を知り、一生地図に残るものを作りたいと考えるようになった」と語る。
 大分のNBUを選んだ理由は「一生懸命先生が教えてくれそうな姿勢が伝わったから」だと言う。同日の講演会の演題が興味深い。『落ちこぼれ学生が一つの夢をつかむまで』。
 「大学時代は遊んでばかりで、ゼミの先生にも呆れられるほど。それでも建築は好きで、建築家という夢は持ち続けていた」と笑顔で話す。
 卒業後は、地元広島の住宅販売会社アイフルホームFC店で現場監督を務めるようになる。現場を5年、営業を5年続け、建築やデザインから離れた生活が続いた。
 そんな折りにやってきたのが、2008年リーマンショック。35歳の時だった。上司が独立した際に誘ってくれたのがきっかけで、現在の会社に入社した。「大町君がしたいことは何」と聞かれ、湧き上がってきたのは「建築がしたい」という、あの頃の思い。そこから一般住宅の建築を始めた。
 大分県で印象に残っている建築があるという。「夫婦で住む家のリノベーションを依頼された際、施主の好みやライフスタイルと上手く調和したので、湯布院町にある山荘無量塔のイメージで提案をさせてもらった。大変喜ばれ、広島県住まいづくりコンクール2021県知事賞も受賞させていただいた」。大分県で受けた刺激は、kitokitoの建築にいかんなく発揮され、今回受賞した作品「Nestled in the Green House」も、自然や水土里との調和が強く印象づけられるものとなっている。
 現在4人のスタッフを抱え、年間8~10棟の設計・施工をこなしている大町さん。今後は自身の経験を活かし、講演会や教育の現場を通じて地方工務店の活動を支えていきたいと語る。自身の建築においても「次は幼稚園や保育園を手掛けたい」と言う。子どもに夢をという当初の夢への原点回帰だ。
 「建築家はやりたいことをためらいがちだ。予算や工期、施工の大変さから二の足を踏んでしまうこともある。しかしその一歩先へ踏み出すと、2倍の楽しみが待っている。いい建築を残していきたい」と、話は尽きない。その目に光る輝きはまっすぐだ。
 趣味は旅行、キャンプなどのアウトドア。3人の子どもの父親でもあり、まもなく誕生日を迎える46歳。

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