大分建設新聞

インタビュー

首藤 弘樹さん(首藤内装〈文弘堂〉)

2021年10月13日
 国土交通省では、建設産業の第一線で「ものづくり」に携わる人たちに誇りと意欲を持ち、その社会的評価の向上を図ることを目的として、1992年度から毎年「優秀施工者国土交通大臣顕彰」(建設マスター)を実施している。対象は、特に優秀な技能・技術を持ち、後進の指導・育成などに多大な貢献をしている建設技能者。今年度の優秀施工者は483人、うち県内から5人が選ばれた。その中の1人、佐伯市田の浦で首藤内装(文弘堂)を営む首藤弘樹(56)さんは、内装仕上工で受賞した。
 内装仕上工と一口に言われるが、日本式家屋に古くから使われている襖や屏風、掛け軸、額、衝立のほか、画帳、和綴本、巻子などの修復から、いわゆるクロス貼りと呼ばれる壁装を含め表具(経師)=内装仕上工と呼んでいる。
 「81年に親父の弘一(79)が、襖の表装などを手掛ける内装業を起こしたのが始まり。私は83年、佐伯豊南高校を卒業して東京の内装業者に就職。翌年、親父が体調を壊したため、佐伯に戻り家業を継ぐ形になった」そうだ。
 しかし、内装の仕事は全くの素人同然。当時、宮崎県に居た表具師として現代名工と呼ばれる財津達夫(故人)さんに師事を請うた。11年ほど佐伯と宮崎を行き来しながら、佐伯での仕事と、師匠から伝授された襖などの修復技術の両刀をこなした。96年には、師匠から免許皆伝を受けると同時に、いろいろな職種の1級技能士が技を競う第15回技能グランプリで、表具職種の敢闘賞を受賞。以来、1級技能士として佐伯市技能士会に所属し、市内の小学校で「ものづくり」の楽しさを教えるほか、県立高等技術専門校の大分校と佐伯校では、内装の仕事とは何かを講義し、模擬家屋での壁装実習の指導もするなど、後進の指導・育成に力を入れている。
 「佐伯市から依頼された毛利家歴代藩主の掛け軸の修復作業は、今でも続いている。昨年度は国東半島の市指定文化財の仏画の修復をした。今は、日田市の大原八幡宮の絵馬の修復に取り組んでいる」など、思い出の仕事は文化財的にも重要な修復作業が目白押しだ。
 「修復を依頼されるのも何かのご縁。修復せずに放置していると、貴重な文化財がダメになってしまう。次世代に引き渡すパイプ役として修復作業をさせていただくことが私の喜び」と相好を崩した。
 3代目となる真典(23)さんが、今年1級技能士に合格した。「息子には、そんなに急ぐ必要はない。地道にじっくりと基礎を学んで欲しい」と注文をつける。
 首藤内装では、3代の親子と60歳台の2人の女性従業員を含めた5人で内装業をしている。「修復に携わる職人が少ないためか、大分市など市外の自治体からも仕事の依頼が入り始めている。これからも片田舎の佐伯から全国に向けて修復についての発信を続けていきたい」と締めくくった。

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