大分建設新聞

インタビュー

岡野 望美さん((合)パッチワークカンパニー代表)

2022年02月21日
 テレワーク先駆者百選に大分県で初めて選出された国東市の合同会社パッチワークカンパニーの岡野望美代表に話を聞いた(弊紙2月15日号掲載)。
 熊本大学工学部で建築を専攻し、卒業後は鉄骨専門の設計会社に就職した。意匠部を設けるということで上司とゼロからのスタートを切った。「意匠よりも鉄骨の仕事が多かったが、昭和電工ドームや下関の海響館などの施工図に携わったことが大きな実績と思い出になった」と振り返る。
 「自分は会社組織には合わないと思っていたので、職場の再編を機に退社することにした」と静かに話す。独立後、取引先に能力が認められてフリーランスとして働くことが出来た。しかし、数年が経つと充分な収入はあるものの、過酷な納期や引きこもりのような生活に「自分の人生はこのままでいいのか」と悩むようになったという。
 その頃、設計会社時代の先輩が介護のために仕事を辞めるという話が舞い込んできた。以前は共に臼杵造船所の下請け業務を担当した経験がある。そこで、国東と臼杵との間でテレワークによる仕事に取り組んだことが、岡野さんの進路を変えた。
 「テレワークでの人の距離感が自分に合っていることに気付き、むしろ会社員とフリーランスの中間の働き方が必要だと確信した」と当時の心境を話す。そして今では「この働き方は多くの人の人生をもっと豊かにするはずだ」と、パッチワーク式のテレワークを広げることが大きな目標となっている。
 テレワークで仕事を完結することは容易なことではなかったが、時代は岡野さんに沿って流れていたようで「コミュニケーションが中心ということは決して外さずに、テレワークのツールを駆使することにより、仕事の仕方を仕組み化できたことが大きかった」と工夫を重ねた頃を語る。
 「これからは、橋梁点検や鉄骨の施工図の仕事をもっと進めていきたい。また、CADの学校をeラーニングによって実現する準備を進めている」という。
 岡野さんは「人を育てることが楽しく、やりがいを感じている」と自分の変化に少し驚きながら将来の狙うところを話す。「今までの社会とは違う、個人を大切にするアルゴリズムを作りたい。会社で働く人もテレワークで働く人も垣根のない社会を目指したい」と多様化の時代を見据えて話を結んだ。
 ただ、岡野さんは時代の流れに偶然乗ってきたわけではなく、若い頃に鍛えた実力を持っているからチャンスを自分のものにできた。今はテレワークに一番大切なIT技術者もしっかりと確保している。
 アドラー心理学を基にした「嫌われる勇気」(岸見一郎著)という本が行動の転機になったというが、最近の趣味は読書ではなく釣りだ。「YouTubeで研究して友人に助けられて実践している」という岡野さんは、確実にスイッチオフが効いている微笑を見せた。

 
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